収入に合わない過剰なこだわり
私が扱っている素材はフェイクレザーがメインです。
フェイクレザーは本革よりお安いイメージがあるかもしれませんが(私も以前はそう思っていましたが)、大体一番お安いもので2,000円台/1m、高いものになると10,000円を超えるものもたくさんあります。
何故、敢えてそれを選んだか。
理由は単純です。
良いと思った生地がその価格だったからです。作りたいと思えた生地がその価格だったからです。
また、フェイクレザーを扱う上で欠かすことのできない接着芯(生地の裏に貼ることで作品の感触や厚みを調整したり、皺や型崩れを防いだりしてくれる芯地のこと)。
私は現在、ひとつの作品に対して3~4種類の接着芯を使用しています。基本的には表地に1種類、裏地に2種類です。表地の厚さや硬さによっては表地に2種類重ねることもあります。
何故、そんなに使うのか。
理由は単純です。
必要だからです。
特にがま口作品においては、どれもそれぞれ仕上がりを大きく左右するほどの大事な役割があります。
たとえば表地に使用している圧縮ウレタンという接着芯は、そのままでは柔らか過ぎる生地に厚さと強度を与え、型崩れを防ぐ役割をします。
また、ひとつの芯地にも厚さが数種類あり、生地の厚さによってミリ単位で調整しています。
フェイクレザーはコットン生地よりは厚いですが、そのまま表地として使用するには少し頼りないです。
このように、存在を知らなければ使わずに済んだ資材も、その役割を知ってしまうと、作品の完成度を高めるためには、やはり欠かすことができなくなりました。
そしてもうひとつ、私の一番のこだわりでもある、柄合わせ。
柄合わせに伴う裁断ロスは生地を扱う作家さまならお分かりかと思いますが、覗き見にゃんこポーチを製作するようになって裁断ロスが尋常じゃない量になりました。
にゃんこの顔に合わせて色んな角度で裁断するため、生地1mで覗き見にゃんこポーチがぎりぎり4個作れるかどうか。。と云う状態です。
それでもデザイン変更をしない。
生地変更をしない。
我ながらつくづくバカだなぁと思います。
けれど、それを含めて私の作品だと、性分なんだから仕方ないじゃないと、ある方が云ってくださいました。
販売をやめようと考えていた時に、この言葉はとても大きな励みになりました。今回値上げをすることで、たとえ誰も買ってくださらなくなっても、それでも構わないと思えるようになりました。
どんなに高くても、それでも欲しいと思ってくださる方だけにお作りすればいい。
そして、そもそも自分が欲しいと思ったものを自分のために作り始めたのがきっかけです。自分のためには一生作り続けることができるので、ハンドメイドをやめることにもなりません。
それに気付いてからは値上げに対する罪悪感は一切なくなりました。